医療法人社団悠健ドクターアンディーズクリニック

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そもそもなぜがんになるのか?

分裂してコピーを作るときに
重要な「がん幹細胞」

  • 健康な人であっても「がん細胞は、常に発生している」という事実は、
    意外と知られていないかもしれません。大人であれば健常な人でも、
    1日に2000個〜5000個が発生するといわれています。

    しかし、リンパ球などにいる免疫細胞が正常に働いていると、
    それらが駆除されるため、がんを発症しなくてすむというわけです。

    ではなぜ、健常な人でも、がん細胞が毎日大量につくり出されてしまうのでしょうか。
    その原因の1つとして「がん幹細胞」(Cancer Stem Cells略して「CSCs」)
    と呼ばれる概念が、最近注目され始めています。

    がん幹細胞について理解するためには、まず、通常の「幹細胞」について
    基本的なところから説明する必要があります。

    すべての生き物の体は、「細胞」からできています。

    人間の場合、体内には約60兆個もの細胞が存在しています。
    細胞はそれぞれ決まった役割と特徴を持っています。
    「幹細胞」という細胞の最大の特徴は、

    「他の細胞の元となる細胞を生み出すことができる」という点にあります。
    幹細胞は、自分以外の細胞を生み出す際に、通常2つに分裂します。

    この分裂した細胞のうち1つは「幹細胞」として維持され、
    もう1つの細胞は「他の細胞に変化する細胞」となります。
    つまり、幹細胞は傷ついたり、古くなってしまった細胞を
    入れ替えたりするために、新しい細胞を作り続けているのです。

    ですから、たとえば肝臓を70%切り取ったとしても、種々の幹細胞が分裂増殖をして、
    臓器をうまく修復してくれます。元の数以上に増え過ぎたり、
    元の大きさ以上になったりすることはありません。

    「約1週間で、元の形状に戻ることができる」とも言われています。

がん細胞を増殖させているのは
「がん幹細胞」

「がん幹細胞」の働きは、この幹細胞の働きにとてもよく似ています。つまり、片方が「がん幹細胞」であり続け、もう一方が「がん細胞」になって増えていくのです。
そして、「がん幹細胞」には「がん細胞を際限なく増殖させる」という大きな特徴があるため、がん細胞が増えすぎて、
正常な細胞の機能を侵し、人を死に至らしめるというわけです。

では、私たちは「がん幹細胞」と、いったいどのように向き合えばよいのでしょうか。一般的に「がん細胞」は、各種の化学、生物、物理学的な治療に良好な応答性を示します。抗がん剤や放射線で簡単に死滅します。よく抗がん剤治療や放射線でがんが縮小したという話を聞きますが、このことを意味します。

けれども、その〝親玉〞である「がん幹細胞」は、各種治療法に対して応答性が低いため、取り除くことが非常に困難です。

細胞には「アポトーシス」と呼ばれる細胞の自死を制御する機構が備わっています。本来、不必要な細胞は、アポトーシスの働きにより、自死するのです。

ところが、がん幹細胞は、「細胞死」に抵抗する性質があることが最新の研究によって、あきらかにされています。そのため、がん幹細胞を撃退することは、
よほどの対策を講じない限り、なかなか難しいのです。がん幹細胞は抗がん剤や放射線に抵抗性で死滅せずひっそり生き残ります。

がんの怖さは「転移」と
成長のスピード

がんは、発生したその場所にとどまり続けていれば、実はそれほど怖い病気ではありません。
しかしながらがん細胞は、とどまることを知らない増殖機能を持っています。

そして原発組織を離れ、近接するリンパ節や、血管内に侵入し全身をめぐって、遠隔組織に浸潤し、さらには全身(肺、肝臓、リンパ節など)臓器にも転移して
正常組織の機能を損なわせます。その結果、生命までも脅かすというわけです。

がんが怖いのは、他の組織へ浸潤したり、他の臓器へ転移したり、大きくなり臓器を圧迫する点です。体内にがん細胞があったとしても、
大きくならずにそこにとどまっているのであれば、がんはそれほど怖い病気ではありません。しかし、がんは他の細胞よりも成長速度が速く無限に増殖していく特徴があります。

成長するためには栄養が必要になりますが、がんは栄養を補給するために新しい血管を作り(血管新生といいます)、
正常細胞に行くはずの栄養を奪い取ってでも成長を続けようとします。

そして、「がんは、大きくなればなるほど成長速度が速くなる」という原則があります。「がんが大きくなる」ということは「細胞数が多くなる」ということですので、
増えた細胞がそれぞれに細胞分裂していき、がんは瞬く間に大きくなっていきます。

したがって、増殖期になる頃には全身に転移している可能性が高く、よほどの対策を立てない限りは、がんの増殖を抑えることは難しくなります。


  • 1.正常な組織による異常な細胞の排除
  • 2.細胞の増殖とCTC
  • 3.異常な細胞の増殖とCTC
  • 4.血管内、悪性度の極めて高いCTCに変換
  • 5.悪性度の高いCTCは別の場所に転移
  • 6.転移したCTCは別の場所で増殖